入り口にたたずむ巨大石版、その正体は? ――東北大学理学部自然史標本館



*本稿は取材先の認可を経て執筆、掲載しています。
museum1cut

 建物正面に無雑作に置かれた、人間の背丈ほどもある石材。風雨をよけるための覆いすらないこの岩石、はたして展示なのか?

 ……実はこれ、この博物館の立派な収蔵品のひとつなのだ。もっとも厳密には収蔵されてはいないのでちょっと語弊があるのだが、それでも展示品には間違いない。しかも由緒正しい、モロッコ産の石灰岩だ。

 近寄って表面をよく見てほしい。なにやらぐるぐるしたもの(図1)やとがった槍の穂先みたいなもの(図2)が一面に散らばっているのがわかるだろう。一見岩の模様のようだが、これらは地質年代で言う後期デボン紀(約4億年前)に生きていた頭足類=タコやイカのなかまが、浅い海で死んだあと埋められて化石となったものなのだ。つまり一面に、頭足類の死体いっぱい、ということ。

「ところで、イカやタコにこんな殻みたいなものあったっけ?」と疑問をお持ちのみなさま、ごもっとも。たしかに、現在の海にふわふわしている種類はみな軟らかい体がむきだしである。だが、4億年前のかれらは立派な殻を持っていたのだ。

 図1、図2をながめて、「なんとなく貝に似てない?」と思ったあなたはするどい。タコやイカと貝の仲間とは親戚同士なのだ。そして、過去にさかのぼるほど姿が似ている、つまり昔の頭足類は殻を背負って生きていた、ということ。どんな格好をしていたのか、といえば、貝殻から顔を出しているイカ、と考えたらけっこう近い。
museum1cut
図1. ゴニアタイト類(アンモナイトの仲間)
museum1cut
図2. 直角石類(オウムガイ類の仲間)
 さて、この標本のすごいところは;

 @なにより大きい
 A無料で見られる
 B風化のようすが直接観察できる

ということだろう。貴重な海外産化石をここまで贅沢に展示してくれているところはあまりない。春や秋のあたたかい日に、仙台市営バスで青葉山に登り、東北地方の穏やかな太陽を背中にうけつつ太古の海の生物たちについて思いをめぐらす、というのも粋でリーズナブルな休日のすごし方、なのではないだろうか。
東北大学総合学術博物館の公式ホームページへ(理学部自然史標本館へのリンクあり)

home

コラムのトップへ

Copyright (C) White Rabbit Corporation. All rights reserved.