インタビュー企画・シリーズ研究者にきけ! ――東北大学塚本研究室 三浦 均 博士



*本稿は取材先の認可を経て執筆、掲載しています。
塚本研究室
「わかりやすい図、ってとてもだいじなんです」とは、三浦 均 博士。
ごあんない;
東北大学理学部地球科学系・理学研究科地学専攻 資源・環境地球化学グループ 塚本研究室 公式ホームページ
さて、前回のつづき。

次週にせまった国際ワークショップの準備で大忙しの塚本研究室。
そんななか、本稿執筆者のとつぜんのインタビュー依頼にこころよく応じてくださったのが
同研究室のCOE助教、三浦 均 先生と 木村勇気 先生だ。
地球科学研究の最前線をゆく気鋭の若手研究者ふたりに、ご自身の研究内容やそのバックグラウンド、科学に対する思いなどを語っていただいた。

まずは、三浦 均 博士(理学) へのインタビューから:

宇宙からときおり地球に降ってくる隕石。断面をみると、数ミリくらいの大きさの丸い結晶があるのがわかる。この丸いものがコンドリュールだ。
コンドリュールがどうやってできたのか、を数値シュミレーションによって解き明かそうとするのが、三浦先生の研究内容。

――すみません、論文の本文までは事前にカバーできなくて。でも、AbstractとHPでの研究紹介(リンク切れ)は、読ませていただきました。
図がきれいでとてもわかりやすいですね。

図を重視するのは塚本研の方針なんです。図で理解してもらうこと、つまり第一印象をだいじにしています。
だから、塚本先生に結果をみせにいっても、本文をよまずに図だけでだめだしをくらったりもして。

――それでは、さっそくですが質問を。
研究者になろうと思ったきっかけ、およびいまの専門を選んだ理由をお話しください。

高校生くらいのときから、ばくぜんと宇宙に興味がありました。
家に図鑑がひとセットあったこと、それと学研の『科学』の影響が強かったかな。ボイジャーによる海王星の写真がとても印象的でした。

――図鑑、学研『科学』強し! ですね。本稿執筆者の環境もそんなかんじでした。

それから、物理が得意だったこと。よって必然的に宇宙物理学を選択。調べてみたら、筑波大学の自然学類に、希望の内容が研究できる学科があったので進学しました。

――あ、同郷ってわけじゃなかったんですね。失礼。
それでは、次の質問。会心の一本、という論文をおしえてください。

Hitoshi Miura, Taishi Nakamoto, and Masao Doi, Origin of three-dimensional shapes of chondrules. I: Hydrodynamics simulations of rotating droplet exposed to high-velocity rarefied gas flow. Icarus, 197, 269-281, 2008.
です。

――理由は?

博士号取得後、はじめて自分でみつけて、自分でやりとげたテーマだから。思い入れがあります。

――ええと、ごめんなさい。13ページもあって、ずいぶん長いですけど?

Icarus (雑誌名)って、ページ数制限がないんです。Nature あたりとはちがって。

――研究生活の転機の事件、ってなんでしたか?

事件、というよりひとつのエピソードですけど、筑波大の4年生のとき。
研究室の新人歓迎会で教授(当時は助教授)が「わたしのことは先生とはよばないでください。わたしはあなたがたの共同研究者です」と、おっしゃったんです。
つまり、これからは教えてもらうのではない、学生ではなく研究者なのだ、ということを端的にあらわした台詞でした。

――いい言葉ですね。

でしょう?
それと、専攻の変更。理論物理だったのを実験系の地学に変えたこと。
身の振り方、効率的な結果のたどりつきかた、などずいぶん考えました。
物理と地学とは、使用する専門用語がまったくちがう。だから専門用語をつかわずに説明するようこころがけました。すると、今まで自分がどれほど専門用語にたよりきっていたかがよくわかりました。

――なるほど。
専門用語って便利だからつい入れてしまうけど、つかわずに書くってとてもむずかしいことですよね。
さて、次の質問を。
ご専門の分野について一般むけに書かれた書籍で、これは、と思うものを一冊あげてください。

『結晶は生きている』(黒田 登志雄 著、サイエンス社)。結晶成長をまなぶ大学生用。研究室のゼミでもつかっています。
あ、あんまり一般むけじゃないですね。でもほんとうにいい本です。

――研究者をやっていてよかったな、と思う瞬間はどんなときですか?

世界じゅうのだれひとりとして考えつかなかったことをやった、という達成感をおぼえたときです。
それから実際的な利点としては、あるていどの時間の融通が利くところかな。まあ、あんまり忙しくない時期に限られますけど。

――それでは、日常生活などを。研究以外の趣味、特技は?

ひとつは、トランポリン。

――うわ、びっくり。どこでできるんですか?

仙台市内の体育館で、予約すれば道具を借りてできるところがあるんですよ。オリンピック種目になったのですこしはメジャーになってきたかな。

――はじめたきっかけは?

筑波大ならでは、というか、あそこは体育専門学群があるでしょう。だから、体育の授業でこういう特殊なものも選択できたんです。

――ほかには?

もうひとつは、レーシングカート。松島や菅生でできますよ。

――ずいぶんアクティブですね。

ふだん頭をつかっているから、趣味の世界ではおもいきり身体をうごかすことにしているんです。

――何時に起きて何時に寝ますか?

7時半起床、12時就寝。
睡眠時間はおおめに確保します。レム-ノンレム周期を意識して7時間半。6時間にへらしても1週間はもちます。4時間半、だと集中力がおちてしまって、あとでやりなおし、ってことが多くなりますね。

――やっぱり、頭脳労働に睡眠はかかせませんね。
研究時間は一日のうち何時間くらい?

12時間弱くらい。

――激務だなあ。
いまだから話せる大失敗、ってありますか?

うーん、おぼえてないなあ。

――逆に、思い出にのこるいい話は?

ちいさなことはいっぱいあります。研究成果でほめてもらえたり、とか。
そうそう、学生時代「夏の学校」という大学院生の合宿で事務局長をやってぶじ成功させたときには、達成感がありましたね。
人生ではじめて、おおぜいのひとたちと共同作業をした経験でもありましたし。

――あれ、研究って共同作業では?

理論系はひとりでも論文がかけるんです

――なるほど、そうでした。本稿執筆者は実験生物学の世界が長かったもので。あそこは論文執筆者名が10人ならぶなんてふつうですから。
さて、話題を変えて。これから研究職をめざそうという若いひとに向けてなにかひとこと、お願いします。

失敗をおそれるな」。
最近って、研究に限らず万事において、失敗した人にたいして風あたりがきびしいと思うんです。
でも研究は、失敗してあたりまえ。失敗のなかから成功をみつけるものなんです。
失敗をおそれるようになると、独創性がつぶされてしまう。
だから、失敗もよしとする環境づくりがぼくたちスタッフのだいじな仕事だと思っています。環境はととのえますから、どんどんチャレンジしてほしいですね。

――ちょっと根源的な質問を。
科学のいいところって、なんなんでしょう?

ごまかしがきかないところ
正しいものは正しい、まちがっているものはまちがっている、と立場にかかわらず、学生から教授まで同じレベルで議論ができるところ。

――あなたにとって科学とはなんですか?

存在理由。ぼくが死んでも、論文は残ります。

――それでは、次は地球科学研究者むけの質問です。
地球科学って、なんだと思いますか?

ぼくはもともと理論物理の人間なので、持っていたイメージとして、でよければ。
地学って、岩石などの最終形態となったものをみるかんじですね。
現在から過去、と帰納的に調べている。理論物理では、法則(ルール)がまずあって、この仮定からどんな結果が予測されるのか、という逆のアプローチをとっていますから。

――最後になりましたが、これからの目標は?

結晶の研究を隕石にもちこみたい。

――今日はほんとうにありがとうございました。
インタビューを受けての感想は、いかがですか?

たのしかった。こういうの好きです。

――それはよかった。
(2010年9月17日 東北大学塚本研究室にて)
*本取材は、資源・環境地球化学グループ 塚本研究室 博士前期課程二年 野崎壮一郎さんのコーディネートによっています。
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