研究室訪問――東北大学塚本研究室



*本稿は取材先の認可を経て執筆、掲載しています。
塚本研究室
塚本研究室の主要な研究スキーム。
ごあんない:

東北大学理学部地球科学系・理学研究科地学専攻 資源・環境地球化学グループ 塚本研究室 公式ホームページ

このたびの取材に応じてくださったのは、
東北大学理学部地球科学系・理学研究科地学専攻
資源・環境地球化学グループの塚本研究室
上の図にあるように、研究対象は幅広いが
結晶成長、とくに隕石内部のものが主要なターゲットだ。


以下、研究室を率いる塚本 勝男 教授のお話と、
気鋭の若手研究者インタビュー(その1その2)をお届けしたい。
「あたりまえすぎて忘れられがちなのかもしれませんが、隕石って、宇宙で形成されたんです。つまり無重力状態で」とは、塚本教授。
「だから、重力のある地上での知識を、そのまま隕石の結晶成長に外挿してはいけないんです。
無重力の状態で結晶の成長のようすを再現し、その場で観察しないと」

”その場観察” とは、塚本研の主要キーワードのひとつ。
科学的観察の基本中の基本、「なにかが起こっているその場所で」「自分の目で」みることを大事にする、という考え方だ。

「宇宙での結晶成長実験は、2007年のFoton M3で行われています。
塚本研究室 Foton M3
そのときの結果が、こちら:
塚本研究室 宇宙での結晶成長
結晶のなかに、1Gのときと微小重力のときの成長のちがいがはっきり残されています。
また、2011年には国際宇宙ステーション『きぼう』にも装置を載せる予定です」

宇宙で結晶をつくって ”その場観察” する困難についても話していただいた。

「たしかに、むずかしいです。
しかし、技術的問題は解決しつつあります。
狭い実験室でも使えるコンパクトさ、そして精度の高さ、
加えて、打ち上げ時の振動に耐えられる強度を兼ね備えたものを
民間企業と共同で開発しています。
実験装置は自分たちでつくります。買ってきたものをそのまま使う、というのはあまりやりません。
たとえば、レーザー干渉計。これまでは、60cm x 60cmで、重いテーブルに載ったものでしたが
いまは、直径16mm。5年間で1mmにする予定です。
小型化、というのは日本のお家芸ですから」
塚本研究室 レーザー干渉計
原理を考えたら自分たちでつくり、つくったら小型化・精密化する。これも塚本研のキーワードだ。

「結晶成長速度は物質によってさまざまなちがいがありますが、
わたしたちの開発した手法で、かなりの範囲を測定できるようになりました。
短い時間も精度を高めましたが、ゆっくりした変化も測定できます。
たとえば、核廃棄物をとじこめるガラス。これまでは10万年もつ、といわれていましたが
実際には100年単位で変化していくことが判明しました。
いまは、地球のとけていく速度だってはかれるようになりました」
塚本研究室 地球のとけていく速度
塚本教授いわく、多くの物質は結晶でできている。もちろん地球も例外ではないのだ。

「また、地表でも微小重力状態をつくりだして実験しています。
たとえば、こちらでは中高生に参加してもらっていますが、
飛行機で上昇と降下をくりかえすことで、短時間ですが微小重力になります」
塚本研究室 微小重力
「その間、濡れタオルをしぼってみると、微小重力なんだから水が玉状になって飛び散るのだろう、と思いきや
じつは、表面張力によって手にはりつくように動く」
塚本研究室 瓶
「また、瓶のなかに入れた少量の水の動きも、地表とはちがっています。内面にそって、上に引っ張られるように動くんです」
塚本研究室 シャボン玉
「同様に、ストローをふいてシャボン玉をつくる、というかんたんなことが微小重力下ではできない。
シャボン液がストローのかべにくっついて、伸びてしまうから。
飛行機にのって、こういう実験をしているときの子供たちの顔はかがやいていますよ」

次世代教育、も塚本研のキーワード。

また、環境問題へのとりくみもユニークだ。

「画期的なCO2の削減方法も考えています。
方解石(炭酸カルシウム、CaCO3)のかたちにして、固定してしまえばいいのじゃないかと。
塚本研究室 沖ノ鳥島
おもしろいところでは、日本最南端の島・沖ノ鳥島の沿岸をコンクリートで造成するかわりに
この方解石で囲んだらいいんじゃないか、とか」

「地球科学とは、どんな学問なんでしょうね?」と、塚本教授は深い問いかけをする。
「はじめに事実の観察。そこから理論を導き出す。
研究アプローチの方法が帰納的なんです。
それだけではなく、「〜だとすると、どうなるか」つまり
帰納的スタイルと演繹的スタイル、両方を使えるようになれればいいですね。
また、対象が狭くなってしまった感じがあります。これからは地球だけを研究対象にするのではなく、
もっと広く、外へ向かっていくべきでしょう。そう、宇宙、とかね」

「研究って、すぐに実用に使えるわけではありません。
だからこそ魅力的な計画を立てて、周囲を巻きこんでいかないと。
また、教育もだいじです。地学分野は、高校までの内容と大学以降の内容とがかけはなれている。
大学でどんな研究をしているのか宣伝するのはひじょうに重要ですね」
(2010年9月16日 東北大学塚本研究室にて)


*本取材は、資源・環境地球化学グループ 塚本研究室 博士前期課程二年 野崎壮一郎さんのコーディネートによっています。
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