みんなのあこがれ、霊長研――京都大学霊長類研究所



*本稿は取材先の認可を経て執筆、掲載しています。
京都大学霊長類研究所
正面玄関。京都大学の施設だけれど、所在地は愛知県犬山市。
となりが日本モンキーパーク、というすばらしい立地。
ごあんない:

京都大学霊長類研究所 公式ホームページ

霊長類、つまりサル研究では世界屈指の機関である本研究所、
どのへんがみんなのあこがれ、なの? といわれれば:

京都大学霊長類研究所 アイちゃん
やっぱり、チンパンジー界のスーパースター・アイちゃんを擁しているあたりとか。


もちろん、人間のほうも有名。
歴代在籍者をみると、
今西錦司河合雅雄、 瀬戸口烈司(以上敬称略)
などビッグネームがごろごろ。
そんなわけで、すくなくとも霊長類にかんする研究を志すものにとっては、みんなのあこがれ、なわけだ。


今回の取材では、系統発生分野所属、さいきんミャンマーでの野外調査を終えて帰国したばかり、の
荻野慎太郎さんに内部を案内していただいた。
霊長研系統発生分野は、ひとことでいえば霊長類の進化について研究するところ。
なんとスタッフ全員が古霊長類学をはじめとした化石研究に携わっている、という
日本国内ではちょっと類をみない体制をしいている。
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こちらは、化石標本の型をとるための部屋。
有機溶剤を使用するので、排気ダクトは完備されている。
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こんな感じで、歯科用石膏をつかって化石から型をとる。
右の写真はゾウの臼歯。やっぱりでっかい。
ちなみにまだ水平交換 *) をしていなかった時代のものだそうだ。

*) ゾウの臼歯の水平交換についてはこちらがくわしい
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こうやってとった型はどうするのか、というと
上のような機械をつかって長さを測定する。
荻野さんの研究範囲は形態解析なので、
化石の実物がなくとも、石膏レプリカさえあれば
研究が可能なんだそうだ。
よって、ミャンマーなど霊長類化石の持ち出しが禁止されている国のサンプルでも、
型がとれればだいじょうぶ、というわけ。
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さて、次はおまちかね、骨格資料室につれていっていただく。
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入室すると、いきなり解剖学研究室みたいな人体骨格くんがおでむかえ。
まあ、ヒトも霊長類だし。
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部屋の大部分を可動式の収納棚が占めている。圧巻。
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棚のなかには、とにかくサルの骨、骨、骨。
骨ずきの執筆者は一気にヒートアップする。
パリ国立自然史博物館もすごかったけど、ここも相当すごい。
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荻野さんに質問:
――ものすごい標本の数ですけど、カハクには勝てるんですか?
「すくなくともサルにかんしては、うわまわっていますね」
――ひょっとして、世界レベル?
「はい、ここくらい持っているのは世界中でもそう多くはありません。あくまでサルにかんして、ですが」

サルにかんして、と範囲を正確に限定するあたりがやっぱり科学者。
さらに、荻野さんからすてきな提案が:
「屋上に行ってみます? 骨の処理をしているんですけど」
もちろん、行く行く!
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四階のベランダから、飼育されているサルたちや
研究所の全景をながめてから……
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……らせん階段をのぼって屋上へ。
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屋上には小さな建物がいくつかあって、うちひとつの内部はこんな感じ。
鍋で煮て筋肉や脂肪を落とし、骨格だけにする、という作業を行う部屋だ。
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最後に、食堂の奥にある展示室をみせていただいて、案内終了。
ちなみに右の写真は、かのルーシー
荻野さんにまた質問:
――海外にはひんぱんに調査に行かれるんですか?
「はい、古霊長類学は日本ではサンプルが調達しにくい分野ですから
年に三、四度ほど野外調査にでかけます」
――最近はミャンマーに行かれたそうですが、どうでした?
「そうですね、昼間は日陰でも39℃、といった感じです。
水はにごった川の水。井戸水があったら御の字、みたいな」
――(ほとんど命がけなんだなあ……)ここで研究したい、っていう若いひとたちは、どうすればいいんでしょう?
「霊長研では大学院生を受け入れてます。
京都大学大学院理学研究科の大学院生、というかたちになりますが
もちろん京大だけでなく、全国各地、また海外からもきていますよ。
各分野にコンタクトをとってみてください。
もちろん、系統発生分野でも大募集中です」


舞台裏はちょっとたいへんみたいだけど、
なにせ国内随一の、世界的にも有名な化石霊長類研究分野。
ここで研究できる、っていうのはとても幸せな経験だと思う。
そして今回の取材に協力してくださった荻野さんはじめ系統発生分野のみなさん、
これからも骨にかこまれ、あかるくたのしく、がんばってください。
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2010/07/09 執筆

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