数学者ふるさと探訪:エヴァリスト・ガロア Evariste Galois, 1811-1832(増補改訂版)



 夭折の天才ガロア。彼の抽象代数学における不朽の功績についてはあまりにも有名なので、本稿においてくわしくは触れない(さらに知りたい方々のために、いちばん最後に厳選参考文献リストをあげておきます)。

 先日フランスを訪れる機会があったので、彼ゆかりの地を巡り、その短くもいたましい生涯について振り返ってみた。
Bourg-la-Reine 地図 Bourg-la-Reine 地図
まずは、生誕の地Bourg-la-Reineへ。パリ市内のリュクサンブール駅からRER-B線で約15分。徒歩で簡単に一周できてしまうくらいのちいさな街だ。
ちなみに、市街地の詳細な地図は公式ホームページにPDFがあるので、そちらも参考に。
ガロア中学 ガロア中学
駅の西側に降り立ち、ガロア探索開始。こちらはガロア中学College Evariste Galois、でもただ名前をもらっているだけで、とくにゆかりが深いわけではないようだ。

ガロア生家跡プレート ガロア生家跡プレート
東に向かって移動し、生家跡を示すプレートPlaqueを発見。ガロアはここで1811年に生まれ、以後母親から教育を受けながら1823年まで過ごした。
ただ、このプレートは小さいうえに建物の二階部分にあり、非常に発見しにくい。
ガロア墓 ガロア墓
さらに移動、墓地Cimetiereに到着。
墓の下部には、もと市長であるやはり非業の死を遂げた父ニコラ・ガブリエル・ガロアNicolas-Gabriel Galoisの名前があった。
だが、周囲の市民たちの墓がきれいに花で飾られているのとは対照的に、街の偉人である親子の墓は寂しかった。
ガロア墓
 いたたまれなくなって、墓地向かいの花屋でかわいいおばあちゃんから菊の鉢植えを購入。この日は風がとても強かったので、倒れないよう植え込みの前に置いてから、合掌して黙祷する。かれらの激烈な生と早すぎる死について回想しながら。
 晩秋の小雨の降るなか墓地を後にし、ガロア広場を目指す。
ガロア通り
ガロア通り Avenue Galois に入る。ちなみに、こっちのガロアは市長だったお父さんのほうだ。
ガロア広場 ガロア広場
 ガロア広場 Square Evariste Galois に辿り着く。だが、広場ともいえないような狭い場所に、プレートがひとつぽつんとあるだけ。
街の偉人に対してなんとも寂しい扱いだ。胸像を建てて金文字で飾ってもいいくらいなのに、と再度憤るが、墓が再建されただけまだまし、なのだろうか?
パリ市内地図
 次は、パリ市内に戻って母校めぐり。
Louis Le Grand Louis Le Grand
 ここはリセのLouis Le Grand。少年ガロアは1823年から29年まで在籍した。ここで彼は数学との運命的出会いをすることになる。
Ecole Normale Ecole Normale
 こちらは高等師範学校 Ecole Normale。1929年から31年まで在籍。
しかし、、正門前の学校の歴史説明版にはガロアのことはなにも書かれてはいなかった。フランス最高、いや世界最高と言っても過言ではない数学上のスーパースターに対してそれはちょっと失礼なんじゃないの? と憤る日本人。
だが、学校を出た理由が急進的政治活動による退学処分、ではしかたがないかもしれない。


 高等師範学校を去ったあと、ガロアは早すぎる死を迎えることになるのだが、詳細について知りたい方は以下の文献をどうぞ:
厳選参考文献リスト

伝記;

『数学をつくった人びと』 E.T. ベル
数学者伝記の基本中の基本。ハヤカワ文庫版は三巻組のうち第二巻にガロアが出てきます。これで生涯の全容をつかみましょう。


『天才の栄光と挫折 数学者列伝』 藤原 正彦
ちょっぴり応用編。フジワラ先生が華麗な美文で有名数学者たちの生きざまを描き出してくれます。ガロアに割かれたページ数は多くはありませんが、「天才とは常に単純で、思いこみが激しい」のひとことはけだし名言でしょう。


『アーベルとガロアの森 数学史の歩き方』 山下 純一
激しく応用編。本稿よりさらにつっこんでガロア関係の取材をしている白眉の一冊、おすすめです。
でも、実はガロア編よりアーベル編 Niels Henrik Abel 1802-1829 のほうがはるかに面白い。とくに真冬のノルウェーで遭難寸前(!)になっちゃうところ、とか。
やっぱり、北欧旅行は季節を選んだほうがよいのでは。


The MacTutor History of Mathematics archive
古今の数学者について、情報を網羅的に収集したウェブサイト。
肖像画や写真によるPosterがあるところが独特。ちなみにガロアのものはここ(リンク切れ)から見ることができます。
また、数学版・今日はなんの日?(リンク切れ) も楽しい。
研究内容;

『物理のかぎしっぽ』
「代数学」のページで、ガロアがつくりだした群論について詳細に扱っています。
おそらく、ウェブサイトのなかではわかりやすさと詳しさがいちばんなのではないでしょうか。


『代数方程式とガロア理論』 中島 匠一
タイトルどおり、ガロア理論についての専門書です。
とても楽しく、とっつきやすい文体が魅力。「標語:群を見たらガロア群と思え」や「どんな分離拡大もガロア理論でとららえられる、これをガロア原理主義と呼ぶ」「以上、四つの性質すべてを兼ね備えた存在がガロア拡大だ、という悟りの境地に達する」など個性的な表現が満載の、笑える数学専門書というまれな存在。
だがもちろん、内容はけっして初歩的ではないので心してかかりましょう。
同著者による『代数と群論の基礎』もおすすめ、中島節大炸裂の良書です。
「いかにも群だという群、とはなんなのか悩んで旅に出たりしないように」、だそうです。はい、そんな理由で家出したりはしません。


『なぜこの方程式は解けないか? 天才数学者が見出した「シンメトリー」の秘密』 マリオ・リヴィオ
専門書はつらいや、という方はこちらをどうぞ。
群論について豊富な例をあげ、比喩的かつ視覚的に説明してくれます。
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